カスハラ対策に防犯カメラ・録音は使える?設置場所と告知の注意点【2026年10月義務化対応】

トラブル対応

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」への防止措置が事業主の義務となります。

店舗や受付窓口を運営する法人担当者の中には、

「防犯カメラを設置すればカスハラ対策になるのか」

「顧客とのやり取りを録音してよいのか」

「今ある防犯カメラをそのまま使えるのか」

と疑問を持つ方もいるでしょう。

結論から言うと、カメラや録音装置そのものの導入が法律上の必須設備になったわけではありません。

重要なのは、カスハラへの対応方針、相談体制、発生後の対応、従業員保護などを組織として整えることです。

防犯カメラや録音装置は、その中で事実関係を確認し、従業員を保護するための記録手段として有効です。

ただし、機器を設置するだけでは対策は完成しません。

  • どの接点を記録するのか
  • 映像だけでよいのか
  • 音声も必要なのか
  • 顧客へどのように知らせるのか
  • 録画・録音データを誰が確認するのか
  • 何日保存するのか

まで決めておく必要があります。

この記事では、2026年10月の義務化を前に、防犯カメラや録音装置をカスハラ対策へ活用するときの設置場所、既存設備の流用、告知、個人情報の取り扱い、費用について整理します。

※本記事には広告・アフィリエイトリンクが含まれます。本記事は2026年7月時点の公開情報をもとに作成しています。制度や自治体の支援内容は変更されることがあるため、最新情報は厚生労働省、個人情報保護委員会、各自治体などの公式情報をご確認ください。個別事案の法的判断については、弁護士等の専門家へご相談ください。

結論|カメラ・録音はカスハラ対策の「記録手段」として考える

カスハラ対策で最初に考えるべきなのは、どのカメラを購入するかではありません。

先に次の順番で整理します。

  1. カスハラが発生する可能性がある接点を洗い出す
  2. 発生時にどのような情報が必要か決める
  3. 既存カメラや録音設備で記録できるか確認する
  4. 不足する部分だけ追加する
  5. 保存・閲覧・外部提供のルールを決める
  6. 従業員へ対応方針を周知する

たとえば、レジでの暴言や威圧的な言動を確認したいのであれば、防犯目的で店舗入口だけを撮影しているカメラでは十分な記録が残らないことがあります。

反対に、既存カメラですでに受付カウンターの状況を確認できるなら、画角調整や保存期間の見直しだけで対応できることも考えられます。

カスハラ対策では「カメラを何台増やすか」より、必要な場面を後から確認できる記録になっているかが重要です。

2026年10月の義務化で事業主に求められること

厚生労働省は、2026年10月1日からカスタマーハラスメント防止措置を事業主の義務とすることを公表しています。カスタマーハラスメント防止指針も2026年2月26日に公布されています。

対策は、機器導入だけでは完結しません。

事業主側では、主に次のような体制を整えていくことになります。

  • カスハラに対する方針を明確にする
  • 従業員へ方針や対応方法を周知する
  • 相談できる体制を整える
  • 発生後に事実関係を確認する
  • 被害を受けた従業員へ配慮する
  • 再発防止につなげる
  • 相談者などのプライバシーへ配慮する

防犯カメラや録音は、この中でも「何が起きたのか」を確認する際の記録手段として位置づけられます。

つまり、

機器を設置すること=カスハラ対策義務を果たすこと

ではありません。

機器は、社内方針や相談体制と組み合わせて使うものと考えてください。

防犯目的のカメラとカスハラ対策の記録では見る場所が違う

すでに店舗や事業所へ防犯カメラを設置している場合でも、その映像がカスハラ対応に使えるとは限りません。

理由は、設置目的によって必要な画角が異なるためです。

比較項目一般的な防犯目的カスハラ対応で確認したいこと
主な目的侵入・盗難・破損などの確認顧客対応時の事実確認
主な場所出入口、売場、外周レジ、受付、相談窓口など
画角広範囲を確認対応状況を確認できる範囲
音声必須ではない業務によって検討
保存一定期間後に上書き事案発生時に必要部分を保存
閲覧者管理者・防犯担当管理者、人事、相談窓口など

たとえば、レジ全体は映っていても、カメラが遠すぎて対応状況を確認できなければ、事実確認に利用できる情報は限られます。

一方で、必要以上に顧客や従業員を大きく映す必要もありません。

何を記録したいのかを決め、その目的に合う範囲へ調整することが基本です。

既存の防犯カメラを流用できるか確認する

カスハラ対策のために、必ず新しいカメラを設置する必要はありません。

まず既存映像を再生して確認してください。

確認するポイントは次の4つです。

1.対象となる接客場所が映っているか

レジ、受付、窓口など、実際に顧客と従業員が対応する場所を確認します。

2.必要な状況を確認できる画角か

人物が映っていても、小さすぎる、背中しか映っていない、棚やPOPで遮られている状態では、事実確認に利用できる情報が限られます。

3.夜間や逆光でも確認できるか

入口付近や窓際では、逆光によって人物が暗く映ることがあります。

実際の営業時間帯の映像で確認してください。

4.必要な期間まで映像が残っているか

カスハラの報告が管理者へ届いた時点で、すでに映像が上書きされていては確認できません。

「従業員から報告が上がるまで何日かかるか」を考え、必要な録画期間を決めます。

既存設備で条件を満たせない場合に、

  • カメラ追加
  • 設置位置変更
  • 画角調整
  • 録画容量の増設
  • 音声記録の追加

を検討します。

カスハラ対策のカメラ・録音はどこに設置する?

カスハラは、顧客と従業員が直接やり取りする場所で発生します。

そのため、施設全体へカメラを増やすのではなく、接点を洗い出すことから始めます。

接点主な業種設置・記録の考え方
レジ小売・飲食・ドラッグストア顧客側と従業員側の対応状況を確認できる位置
受付・窓口クリニック・不動産・士業・施設カウンター周辺を必要な範囲で記録
電話コールセンター・管理会社・修理受付通話録音システムを検討
応接室法人営業・相談業務利用目的と記録条件を決める
訪問・外勤介護・設備保守・配送業務内容に応じ携帯型機器等を検討
工場・倉庫の受付製造・物流納品業者や来訪者との対応場所を確認

レジ

小売店や飲食店では、レジカウンターが重要な接点です。

既存の防犯カメラがレジを撮影していても、金銭管理を目的として手元だけを映している構成や、売場全体を遠くから撮影している構成もあります。

実際の接客状況を確認できるか、既存映像を再生してください。

受付・相談窓口

クリニック、不動産会社、施設などでは、受付カウンターでのやり取りが中心になります。

待合スペース全体を必要以上に撮影するのではなく、対策目的に必要な範囲へ画角を調整します。

電話対応

電話でのカスハラが課題の場合、防犯カメラでは対応できません。

通話録音システムなど、電話対応に適した方法を検討します。

固定電話、クラウドPBX、スマートフォンなど、使用している通信環境によって対応方法が異なるため、現在の電話システムを確認してください。

工場・倉庫

工場や倉庫でも、納品受付、搬入口、事務所窓口などで外部の人と接する機会があります。

防犯目的のカメラが敷地全体を撮影していても、受付での対応状況を確認できるとは限りません。

どこで顧客・取引先・来訪者と接するのかを洗い出してください。

カスハラ対策のカメラ設置では、台数よりも、既存カメラの画角、受付位置、照明、配線、必要な収音範囲などの現地条件が重要です。

既存設備を流用できるか、追加設置が必要かを自社だけで判断できない場合は、条件に対応できる施工業者へ相談する方法もあります。問い合わせ後、希望条件を確認するための電話連絡が入ることがあります。

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録音するときは「法的義務」と「実務上の告知」を分けて考える

録音については、「必ず相手の同意を取らなければならない」と一律に考えるのも、「何も知らせなくてよい」と考えるのも適切ではありません。

個人情報保護委員会は、顧客との電話内容から特定の個人を識別できる場合、その録音は個人情報に該当し、利用目的を通知または公表する必要があるとしています。一方、個人情報保護法上、録音していること自体を相手へ伝える義務までは負わないとしています。

したがって、少なくとも電話録音については、

「録音告知が法律上一律の義務である」

とは言えません。

ただし、顧客とのトラブル防止や、なぜ記録しているのかを分かりやすくする観点から、録音・録画を知らせる運用を検討することには意味があります。

たとえば、

  • 店頭掲示
  • 電話の自動ガイダンス
  • Webサイト上のカスハラ対応方針

などで、記録の目的を案内する方法があります。

店頭で音声を収録する場合など、電話録音とは異なる状況の法的評価は個別事情によって変わります。運用設計に迷う場合は、弁護士等へ確認してください。

告知文は「顧客を排除する表現」にしない

カスハラ対策を周知するときは、正当な意見や苦情まで拒否する印象を与えないことが重要です。

たとえば、次のような表現が考えられます。

店頭掲示の例

従業員が安心して働ける環境づくりと、対応内容の確認のため、受付カウンター周辺を録画しています。

記録は、事実確認および従業員保護など、当社が定める目的の範囲で取り扱います。

ご意見・ご要望には、引き続き誠実に対応いたします。

電話ガイダンスの例

応対内容の確認および従業員保護のため、通話を録音しています。

※実際に使用する文面は、自社の利用目的や運用に合わせて調整してください。

録画・録音データの個人情報管理を決める

顔が識別できる映像や、内容から特定の個人を識別できる音声は、個人情報として取り扱う必要が生じます。

個人情報保護委員会は、カメラ画像の取得について、本人が撮影されていることを容易に認識できない状況では、掲示などによって認識できるようにする措置が考えられるとしています。カメラであることが明らかな場合でも、掲示によって認識可能性を高めることが望ましいとしています。

導入前には、次の項目を決めてください。

  • 録画・録音する目的
  • 対象となる場所
  • 保存期間
  • 閲覧できる担当者
  • 事案発生時の映像保存方法
  • 外部へ提供する場合の承認手順
  • データの管理責任者
  • 問い合わせ窓口

特に重要なのが、閲覧権限です。

「防犯カメラだから管理者なら誰でも見られる」という運用にせず、カスハラ事案の確認に必要な担当者へ限定します。

防犯カメラ全般の撮影範囲やデータ管理については、法人の防犯カメラとプライバシー|設置前に確認する撮影範囲と運用ルールも参考にしてください。

記録は「撮って終わり」にしない

カスハラ対策で問題になりやすいのが、事案発生後に映像を確認しようとした時点で、すでに録画が上書きされているケースです。

そのため、次の流れを決めておきます。

  1. 従業員が事案を管理者へ報告する
  2. 管理者が発生日時を確認する
  3. 必要な録画・録音データを特定する
  4. 上書き前に必要部分を保存する
  5. 閲覧権限のある担当者が確認する
  6. 必要に応じて関係部署と対応を検討する

映像を残す仕組みだけでなく、現場から管理者へ報告する仕組みが必要です。

たとえば録画保存期間が14日あっても、事案が1か月後に初めて報告されれば記録を確認できません。

機器の保存期間と、社内の報告ルールをセットで考えてください。

導入前に確認する7項目

カスハラ対策としてカメラ・録音を検討するときは、次の7項目を確認します。

  • カスハラが発生する可能性がある接点を洗い出した
  • 既存カメラの映像を実際に再生して確認した
  • 音声記録が必要か検討した
  • 録画・録音の利用目的を決めた
  • 顧客への案内方法を検討した
  • 保存期間と事案発生時の保存手順を決めた
  • 閲覧者と外部提供の判断者を決めた

このうち、カメラの設置や機器選定に直接関係するのは一部です。

残りは、社内方針と運用の問題です。

機器導入と社内ルール整備を別々に進めるのではなく、並行して検討してください。

費用と補助制度を確認する

カスハラ対策用のカメラ・録音設備の費用は、

  • 設置する接点の数
  • 既存カメラの流用
  • カメラ追加
  • 新規配線
  • 音声設備
  • 録画容量
  • クラウド利用

などによって変わります。

既存設備を利用できる事業所と、新しくカメラ・配線・録画環境を構築する事業所では、必要な工事が異なります。

また、自治体によってはカスハラ対策の支援制度を設けています。

たとえば名古屋市の2026年度「中小企業カスタマーハラスメント対策支援補助金」では、従業員と顧客等との接点を録画する管理用カメラ、ウェアラブルカメラ、クラウド型録画システム、通話録音装置などが対象経費として案内されています。一方、防犯を目的とする設備は対象外と明記されています。申請期間は2026年6月22日から10月30日17時必着です。

補助制度は地域や年度によって異なるため、自社所在地の自治体や支援機関の公式情報を確認してください。

特に補助制度を利用する場合は、契約や発注のタイミングが申請条件に影響することがあります。

カメラの設置条件や既存設備の流用可否を確認したい場合は、現場条件に対応できる施工業者へ相談する方法もあります。

2026年10月の施行に向けて準備する場合は、社内方針や相談体制の整備と並行して、必要な設備の確認を進めてください。

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よくある質問

Q.カメラや録音装置を導入しないと法律違反になりますか?

カメラや録音装置そのものが必須設備として義務付けられたわけではありません。2026年10月1日から事業主にカスハラ防止措置が義務付けられますが、機器は事実確認などを支える手段として考えます。

Q.顧客へ知らせずに電話を録音すると個人情報保護法違反になりますか?

個人情報保護委員会は、通話内容から個人を識別できる場合は個人情報に該当し、利用目的の通知または公表が必要になる一方、録音していること自体を相手へ伝える義務までは個人情報保護法上負わないとしています。実際の運用では、利用目的や顧客対応方針を踏まえて告知方法を検討してください。

Q.今ある防犯カメラをそのまま使えますか?

既存映像で必要な接客場所を確認でき、必要な期間まで録画が残るなら、既存設備を活用できる可能性があります。まず実際の映像を再生し、受付・レジなどの状況を確認できるかを見てください。

Q.録画・録音データは何日保存すればよいですか?

一律の日数は決められません。事案が現場から管理者へ報告されるまでに必要な期間を考え、その時点までさかのぼれる保存期間を設定します。事案が発生した映像は、通常の上書き録画とは別に保存する運用も決めておきます。

Q.従業員がカメラ設置に抵抗を感じている場合はどうすればよいですか?

まず、従業員を監視するためではなく、顧客対応時の事実確認や従業員保護など、具体的な設置目的を説明します。そのうえで、撮影範囲、閲覧できる担当者、保存期間、利用目的を明確にしてください。

まとめ|カスハラ対策は機器と社内ルールをセットで整える

2026年10月1日から、カスハラ防止措置が事業主の義務となります。

ただし、カメラや録音装置を導入するだけで対応が完了するわけではありません。

進める順番は次のとおりです。

  1. カスハラが発生する可能性がある接点を確認する
  2. 既存カメラ・録音設備で必要な記録が残るか確認する
  3. 不足する機器・画角・保存期間を整理する
  4. 録画・録音の利用目的を決める
  5. 保存・閲覧・外部提供のルールを決める
  6. 相談窓口と事案発生後の対応を整える
  7. 従業員へ方針と対応方法を周知する

特に防犯カメラをすでに設置している事業所では、最初から新しい機器を購入するのではなく、まず現在の映像を再生して確認してください。

既存カメラを活かせるか、画角調整で足りるか、新しいカメラや録音設備が必要かを切り分けることで、必要な対策を整理できます。

次にすること

まずは、自社で顧客と従業員が接する場所を洗い出してください。

  • レジ
  • 受付
  • 電話
  • 相談窓口
  • 応接室
  • 訪問・外勤
  • 納品受付

次に、既存の防犯カメラがある場合は、実際の映像を再生します。

そのうえで、

  • 必要な状況を確認できるか
  • 音声が必要か
  • 保存期間が足りるか
  • 顧客への案内をどうするか
  • 誰が記録を管理するか

を決めてください。

画角、配線、録画容量、音声設備など、自社だけでは判断できない項目がある場合は、現地条件に対応できる施工業者へ相談して設置方法を確認します。

機器の準備だけでなく、カスハラへの方針、相談体制、事案発生後の対応ルールも2026年10月の施行に向けて並行して整えてください。

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