SNSなどを通じて実行役を集める、いわゆる「闇バイト」を入口とした強盗や窃盗は、住宅だけの問題ではありません。
現金や高額商品を扱う店舗、夜間や休日に無人となる事務所、資材や在庫を保管する倉庫・工場も、防犯体制を見直す必要があります。
ただし、不安から防犯カメラを無計画に増やしても、必要な場所を記録できなければ十分な対策にはなりません。
店舗・事務所・倉庫の強盗対策では、次の順番で整理することが重要です。
- 外部へ知られる情報を減らす
- 建物へ接近した人物や車両を記録する
- 出入口や裏口からの侵入に備える
- 被害発生時に映像を保全できる状態を作る
- 従業員の安全確保と通報手順を決める
この記事では、闇バイト・トクリュウによる強盗や窃盗に備え、法人担当者が見直す対策と、防犯カメラを優先して設置する場所を解説します。
防犯カメラは、被害を完全に防ぐ設備ではありません。現金管理、施錠、照明、警備、通報体制と組み合わせて使用することが前提です。
※本記事には広告・アフィリエイトリンクが含まれます。掲載内容は2026年7月時点の公表情報をもとにしています。防犯カメラの設置可否、必要台数、工事内容、録画期間、費用は、建物構造、敷地、配線、電源、既存設備によって異なります。導入前に現地調査や見積もりでご確認ください。
結論|強盗対策は「情報・接近・侵入・記録」の4段階で考える
店舗や事務所の強盗対策は、防犯カメラだけで考えず、次の4段階に分けて整理します。
| 段階 | 目的 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 情報流出を減らす | 金品や警備状況を外部へ知らせない | 現金管理、情報管理、SNSやWeb掲載内容の確認 |
| 接近を記録する | 建物周辺の人や車両を確認する | 外周カメラ、駐車場カメラ、照明 |
| 侵入へ備える | 建物内への侵入に時間をかけさせる | 施錠、補助錠、シャッター、警報設備 |
| 記録を残す | 被害時の事実確認と捜査協力 | 出入口・搬入口の録画、保存期間、映像書き出し |
防犯カメラが主に担うのは、接近状況と侵入前後の記録です。
一方、現金を残さない、出入口を施錠する、従業員の通報手順を決めるといった対策は、日常の運用で整えます。
機器と運用のどちらか一方ではなく、両方を組み合わせてください。
闇バイト・トクリュウとは
警察庁は、SNSや求人サイトなどを利用して実行役を募集し、匿名性の高い通信手段を使いながら、特殊詐欺や強盗などを行う集団を「匿名・流動型犯罪グループ」と位置づけています。
通称として使われる「トクリュウ」は、この匿名・流動型犯罪グループを指す言葉です。
グループの構成員が固定されず、犯行ごとに役割が分かれる点が特徴です。指示役と実行役が直接面識を持たない形で事件が行われることもあります。
事業所側が犯罪グループの構造を詳しく理解する必要はありません。
防犯上重要なのは、次の点です。
- 建物や営業状況に関する情報を外部へ出しすぎない
- 接近経路と出入口の記録を残す
- 不審な状況を従業員間で共有する
- 危険を感じたときに対面で確認しに行かない
- 被害時に映像を保全できるようにする
店舗・事務所が先に見直す4つのリスク
防犯カメラの台数を決める前に、自社のどこにリスクがあるかを整理します。
現金や高額商品があると推測される
レジ、金庫、高額商品、貴金属、工具、金属資材などを扱う事業所では、外部から保管状況を推測されないようにします。
確認する項目は次のとおりです。
- 閉店後にレジへ現金を残していないか
- 金庫や保管場所が外から見えないか
- 高額な在庫の入荷日や保管状況を不用意に話していないか
- SNSやWebサイトへ施設内部の配置を掲載していないか
- 廃棄書類や伝票から取引内容を推測されないか
無人になる時間が固定化している
営業時間、閉店作業、搬入時間、休日などが毎日同じ場合、建物内に人がいない時間帯を把握されるおそれがあります。
勤務時間を隠すことだけでなく、無人時間帯にも録画・照明・警報設備が機能しているかを確認してください。
裏口・搬入口・非常口に死角がある
正面入口だけにカメラを設置し、裏口や搬入口が記録されていない事業所もあります。
特に次の場所を点検します。
- 従業員用出入口
- 搬入口
- 非常口
- 建物側面
- 駐車場から建物へ続く通路
- フェンスや植栽で外から見えない場所
録画されていると思い込んでいる
カメラが付いていても、実際には録画が停止している、時刻がずれている、必要な日数が残っていないことがあります。
既存カメラがある場合は、管理画面を見るだけでなく、過去の映像を再生して録画状態を確認してください。
不審な状況を感じたときの対応
同じ人物や車両が建物周辺を繰り返し確認している、施設のカメラや警備状況を撮影しているなど、不審に感じる状況があっても、自分たちで問い詰めたり追いかけたりしないでください。
警視庁も、施設周辺でメモ、録音、撮影をする人や、防犯カメラ・警備員の配置を確認する人を見かけた際には、施設管理者側で警戒し、必要に応じて警察へ通報するよう案内しています。
安全を確保したうえで、可能な範囲で次の情報を残します。
- 日時
- 場所
- 人物や車両の特徴
- どのような行動をしていたか
- 防犯カメラに記録されている時間帯
- 従業員が受けた不自然な質問や問い合わせ
緊急性があるときは110番通報を優先します。
その場で危険が迫っていないものの不審な状況が続く場合は、最寄りの警察署へ相談してください。
防犯カメラを優先して設置する場所
限られた台数で防犯カメラを設置する場合は、人や車両が必ず通る場所から優先します。
| 優先度 | 設置場所 | 記録する目的 | 設置時の要点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 正面・従業員用出入口 | 入退室した人物、服装、時刻 | 逆光と顔の高さを確認 |
| 2 | 建物外周・接近経路 | 接近前後の行動、移動方向 | 夜間照明、屋外対応、死角を確認 |
| 3 | 裏口・搬入口・非常口 | 人目が少ない出入口の記録 | 扉の正面だけでなく接近経路も映す |
| 4 | レジ・金庫・保管場所 | 室内での状況確認 | 従業員のプライバシーと閲覧権限を決める |
| 5 | 駐車場・敷地入口 | 車両の出入り、逃走方向 | 広域確認用と車両確認用を分けて検討 |
正面入口・従業員用出入口
出入口では、人物が建物へ入る前後の映像を残します。
広い範囲を映すだけでなく、人物の顔や服装を確認できる距離と角度が必要です。
ガラス扉や窓がある入口では、昼間の逆光によって人物が暗く映ることがあります。営業時間中の実際の映像で確認してください。
建物外周・接近経路
外周カメラは、人物が建物へ接近する前後の動きを記録します。
次の場所を確認します。
- 道路から入口へ向かう通路
- 駐車場から建物へ入る動線
- 建物側面
- フェンス沿い
- 隣接建物との間
- 植栽や看板で見通しが遮られる場所
屋外では、昼間だけでなく夜間の映像も確認する必要があります。
裏口・搬入口・非常口
正面入口より人目が少ない場所では、扉だけを大きく映すのではなく、扉へ近づく人物の動線も記録します。
倉庫や工場では、搬入車両や納品業者の出入りもあるため、通常業務と不審な状況を区別できる画角が必要です。
レジ・金庫・事務室
室内カメラは、現金や重要物品を扱う場所を記録します。
ただし、従業員が常時働く場所を撮影する場合は、次の項目を決めてください。
- 設置目的
- 撮影範囲
- 閲覧できる担当者
- 録画期間
- 映像を確認する条件
- 従業員への周知方法
駐車場・敷地入口
駐車場全体の状況確認と、車両の特徴やナンバープレートの確認では、必要な画角が異なります。
1台の広角カメラですべてを記録しようとせず、何を確認する目的なのかを先に決めます。
防犯カメラだけに依存しない
警察は、店舗を対象とした強盗対策として、防犯カメラだけでなく、防犯体制、現金管理、店舗構造などを組み合わせる考え方を示しています。
事業所では、次の対策も並行して進めます。
現金管理
- 閉店後にレジへ多額の現金を残さない
- 現金を一か所へ集中させない
- 金庫や保管場所を外から見えない位置にする
- 売上や保管状況を社外へ話さない
施錠と建物設備
- 正面入口だけでなく裏口や窓も点検する
- 鍵やシャッターの故障を放置しない
- 合鍵の管理担当者を決める
- 退職者や異動者の鍵・入退室権限を回収する
照明
- 出入口と建物外周の暗がりを確認する
- 電球切れを放置しない
- センサーライトが必要な場所を検討する
- カメラへ強い光が直接入らない位置に調整する
開店・閉店時の手順
- 可能な範囲で複数名による開閉店を検討する
- 従業員が外へ出る前に周囲を確認する
- 異常を感じたときは外へ出ない
- 緊急時は金品より従業員の安全を優先する
通報体制
- 110番通報を行う担当者
- 従業員を避難させる方法
- 警備会社への連絡
- 責任者への連絡
- 被害後に映像を保全する担当者
を事前に決めてください。
録画映像を被害時に使える状態へ整える
防犯カメラは、設置しているだけでは十分ではありません。
次の項目を定期的に確認します。
- 全カメラが録画されているか
- レコーダーの時刻が合っているか
- 必要な録画日数が残っているか
- 夜間も対象を確認できるか
- HDDやレコーダーに異常表示がないか
- 映像を書き出せるか
- 管理者パスワードを把握しているか
- 障害時の連絡先が分かるか
特に重要なのが時刻です。
カメラごとに時刻がずれていると、複数映像の前後関係を確認する際に支障が出ます。
また、警察庁は、防犯カメラ画像をつないで車両などを追跡する「リレー方式」の捜査事例を紹介しています。自社の映像も、自社敷地内の被害確認だけでなく、人物や車両の移動を確認する手がかりになることがあります。
万一、強盗や窃盗の被害に遭ったとき
被害が発生した場合は、録画映像よりも人命と安全確保を優先してください。
基本となる初動は次のとおりです。
- 安全な場所へ避難する
- 110番通報する
- 負傷者がいる場合は救護を要請する
- 警察の確認前に現場を片付けない
- 防犯カメラの録画時間を確認する
- 録画機を初期化・再設定しない
- 警察の指示に従って映像を保全する
被害直後に、カメラの角度を変えたり、録画設定を変更したりすると、発生時の状態が分からなくなることがあります。
まず現状を記録し、警察や施工業者と相談しながら対応してください。
被害後に見直す項目は、盗難後に防犯カメラを設置する際の確認事項|現場保存・死角・録画設計で詳しく整理しています。
防犯カメラの設置・見直しを進める5つの手順
1.建物図面へ出入口と死角を書き込む
平面図や見取り図へ、次の場所を書き込みます。
- 正面入口
- 従業員用出入口
- 裏口
- 搬入口
- 非常口
- 駐車場
- 建物外周
- 現金・貴重品の保管場所
2.既存映像を昼夜それぞれ確認する
カメラがある場合は、現在の映像を再生します。
「カメラが付いているか」ではなく、必要な人物・車両・場所を確認できるかを判断してください。
3.優先して記録する対象を決める
次の中から優先順位を決めます。
- 人物の顔や服装
- 建物への接近
- 出入口の通過
- 車両の出入り
- レジや金庫周辺
- 搬入口や資材置き場
4.建物側の工事条件を確認する
テナントや賃貸物件では、外壁への固定、天井への穴あけ、共用部への配線に管理会社やオーナーの承諾が必要となることがあります。
自社所有の建物でも、電源、配線、高所作業、壁面の材質を確認します。
5.現地調査で台数・画角・配線を決める
カメラの必要台数は、建物面積だけでは決まりません。
出入口の数、接近経路、夜間照明、配線距離、既存設備によって構成が変わります。
特に次の項目は、現地を確認しなければ確定できません。
- カメラの取付位置
- 死角
- 夜間の明るさ
- 逆光
- 配線ルート
- 電源
- 既存配線の流用
- 高所作業の要否
- 屋外機器の仕様
- 録画期間とHDD容量
出入口・外周・搬入口のどこを優先するか整理できても、建物条件に合う具体的な施工方法は業者によって提案が異なります。
設置場所、配線、電源、録画方法などの相談から始めたい場合は、法人・個人事業主向けに条件に合う施工業者の紹介を受ける方法もあります。
問い合わせ後、希望条件を確認するための電話連絡が入ることがあります。
よくある質問
Q.防犯カメラを設置すれば強盗を防げますか?
防犯カメラだけで被害を完全に防ぐことはできません。接近や侵入前後の記録、対策を実施していることの表示、被害時の事実確認に役立つ設備です。現金管理、施錠、照明、通報体制と組み合わせてください。
Q.ダミーカメラでもよいですか?
ダミーカメラは映像を記録できません。事業所の強盗・窃盗対策では、限られた予算でも、優先度の高い出入口や接近経路に録画できるカメラを設置することを基本に検討してください。
Q.夜間や停電時にも録画できますか?
夜間撮影に対応する機種でも、撮影距離、照明、設置角度によって映像は変わります。停電時に録画を続けるには、録画機やネットワーク機器を含めた電源対策が必要です。必要な継続時間を業者へ伝えて構成を確認してください。
Q.従業員へ知らせずに設置してもよいですか?
従業員が映る場所では、設置目的、撮影範囲、閲覧できる担当者、保存期間を定め、社内へ周知することが重要です。更衣室、トイレなど、プライバシーへの配慮が強く求められる場所は設置対象から外します。
Q.不審な人物を見かけたら声をかけるべきですか?
危険を伴う可能性があるため、自分たちで問い詰めたり追いかけたりしないでください。安全な場所から状況を記録し、緊急性があるときは110番、継続的な不審状況は最寄りの警察署へ相談してください。
まとめ|カメラを増やす前に出入口・外周・録画状態を確認する
闇バイト・トクリュウによる強盗や窃盗への対策では、防犯カメラだけに依存しないことが重要です。
まず次の項目を確認してください。
- 現金や高額商品の管理
- 正面入口と従業員用出入口
- 裏口・搬入口・非常口
- 建物外周と駐車場
- 夜間照明
- 既存カメラの録画状態
- 録画期間と映像の書き出し方法
- 従業員の通報・避難手順
防犯カメラを増設するときは、台数から決めるのではなく、記録する人物・車両・場所を先に決めます。
自社の建物条件に合わせて、出入口、接近経路、搬入口の優先順位を整理し、現地調査で画角・配線・電源・録画方法を確定してください。
法人防犯カメラナビ|法人向け防犯カメラの導入・比較ガイド

